「私はワキガだが、自分の子供がワキガになったらどうしよう。」
「自分の親はワキガだが、自分もワキガになるのだろうか。」
ワキガに関する悩みは、他人にはなかなか相談しにくいものでしょう。
特に遺伝に関することは、家族にも遠慮してしまったりして、一人で抱え込んでしまっている方も多いのではなでしょうか?
そもそもワキガとは、「アポクリン腺」という汗腺から分泌される汗が、表皮菌に分解されることで発生する臭いのことを指します。
アポクリン腺は誰もが持っているものですが、ワキガになってしまう人は、アポクリン腺の数が多かったり、1つのアポクリン腺から出る汗の量が多かったり、人より汗の量が多いことがほとんどです。
こういったワキガ体質の原因として、親からの「遺伝」というものが関わっていることがあります。
ワキガの遺伝とはどういったものなのでしょうか。
この記事では、ワキガが遺伝することについて、遺伝しているかを確認する方法、遺伝していた場合はワキガをどのように治すのかなど、ワキガの悩みについてお答えいたします。
抱えている悩みを解消するためにも、是非とも参考にしてみてください。
目次
1.ワキガは遺伝する体質
前述しましたが、ワキガは遺伝するものです。
遺伝する確率は以下のように言われています。
・両親ともにワキガの場合:80~90%
・片親のみがワキガの場合:50~70%
この数字は、遺伝するものの中でも高い方であると言えます。
ワキガは「優性遺伝」に区分され、身長や髪の癖、目の形などと同様に、親から子供に引き継がれやすいものです。
日本人にはワキガ体質の人は10%程度しかいないと言われていますが、本来は生物的に必要な臭い(フェロモン)であるため、遺伝しやすい特性なようです。
ワキガの遺伝子をY、ワキガではない遺伝子をxとした場合、下記のようになります。
※下記は具体例として分かりやすくするために、細かい条件は省略しています。
そのため、「YY」と「YY」の組み合わせでも、必ずしもワキガが遺伝するとは限りません。
両親ともにワキガの場合
・「YY」と「YY」を掛け合わせると、「YY」となるためワキガが遺伝する。
・「YY」か「Yx」と「xY」か「YY」を掛け合わせると、「YY」「xx」「Yx」「xY」の4つの組み合わせが考えられるため、4分の3(75%)の割合でワキガが遺伝する。
片親のみワキガの場合
・「YY」と「xx」を掛け合わせると、「Yx」となるためワキガが遺伝する。
・「Yx」と「xx」を掛け合わせると、「Yx」か「xx」の組み合わせとなるため、2分の1でワキガが遺伝する。
“ワキガが遺伝していなくても、
ワキガを発症することもある。”
ワキガの遺伝子を持っていなくても、ワキガが発症することもあります。
精神的なストレスや食事の偏りなど、アポクリン腺から出る汗の量が多くなってしまう場合もあるためです。
そのため、遺伝していないからと言って、ワキガにならないとも限りません。
2.ワキガの遺伝をどう判断するか
ワキガであるかを判断するには、次の3つについて確認すると良いでしょう。
1つでも該当すれば、ワキガが遺伝している可能性があります。
・第二次性徴期以降の脇の臭いがくさい
・耳垢が湿っている
・服の脇部分の黄ばみ
2-1.第二次性徴期以降の脇の臭いがくさい
第二次性徴期を過ぎていれば、脇の臭いを確認することで、ワキガかどうかを判断する目安となります。
この時期以降に体臭が気になることがあれば、ワキガの可能性があります。
ワキガは鼻にツンとくる臭いであったり、硫黄のような臭いなど、様々な言葉で表現されますが、「不快な臭いだ」と感じた場合は、ワキガであることを疑って良いでしょう。
なぜ第二次性徴期以降でなければならないかと言うと、ワキガは生後すぐに発症するものでは無いからです。
冒頭でもお伝えいたしましたが、ワキガの原因はアポクリン腺にあります。
アポクリン腺は、実はフェロモンに関係する器官であるため、子供のうちは発達していないことがほとんどです。
そのため、若いうちにワキガが発症することは無いので、ワキガの判断ができません。
第二次性徴期は、アポクリン腺が発達する時期の目安として挙げられます。
この時期は性別についての成長が始まる頃です。そのため、フェロモンに関わるアポクリン腺もその時期に発達する場合が多いです。
第二次性徴期の年齢は、下記が目安です。
一般的に、女性の方が早く迎えると言われています。
第二次性徴期の目安となる年齢
男性:9~13歳
女性:7~12歳
もちろん個人によって発達の早さは違いますが、上記の時期を目安にして、臭いを確認してみると良いでしょう。
2-2.耳垢が湿っている
(引用:http://wakiganotaisaku.com/1406.html)
耳垢が湿っている場合、ワキガが遺伝している可能性があります。
実はアポクリン腺は、全身のうち限られた場所にしかありません。
脇以外に、乳輪周りや陰部、足の裏などにアポクリン腺が存在しています。
耳の中もアポクリン腺が多い場所のひとつです。医学用語で「外耳道(がいじどう)」と言われる部分です。
冒頭でもお伝えいたしましたが、ワキガの原因はアポクリン腺から出る汗によるものです。
そのため、アポクリン腺が多くあれば発汗量も多くなるので、ワキガ独特の臭いが発生しやすくなると言えます。
アポクリン腺の量が多い体質である場合、耳の中などのアポクリン腺も多くなります。
そのため、耳垢が多くの汗を吸い、湿った耳垢になる傾向があります。
ワキガ体質でなければアポクリン腺の量も少ないため、耳垢は乾いたままです。
そのため、耳垢が湿っている場合、アポクリン腺が多い体質である可能性が高いことが分かります。
2-3.服の脇の黄ばみ
(引用:https://wakimen-happylife.com/wakiga_washing/)
着ている服の脇が黄ばむ場合、ワキガであることが考えられます。
アポクリン腺から出る汗は普通の汗とは違い、たんぱく質や脂質を多く含んでいます。
これらの成分は衣服に付着し、時間が経つと黄色い汗ジミになることが多いため、衣服の脇が変色していないかがワキガ体質かの目安となります。
この黄ばみは、簡単な洗濯では落ちないことがほとんどで、黄色の具合が濃いほど、臭いも強くなる傾向があります。
そのため、着ている肌着の脇が黄色く変色していたら、ワキガの可能性があります。
より詳しくワキガのセルフチェックをしたい方はこ、ちらの記事もご確認ください。
ワキガかどうか自分でチェック!自分の体臭が気になったら確認すべき10のこと
3.ワキガの発症を少しでも抑える方法
ワキガ体質が遺伝してしまったからと言って、必ずしもワキガになるとも限りません。
ここでは少しでもワキガを発症しないために、どんなことができるのか、ワキガになる前の対策についてお伝えいたします。
(ワキガを治すための方法は4章をご確認ください。)
効果は限定的かもしれませんが、少しでも発症の可能性を抑えたい場合は、参考にしてみてください。
3-1.規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることで、アポクリン腺の活動を抑制できる場合があります。
生活習慣が乱れているからと言って、アポクリン腺そのものが増えるわけではありません。
ただし生活習慣が乱れることで、ホルモンバランスが崩れたり、ストレスを溜め込んでしまうことで、アポクリン腺の機能が活発化する可能性はあります。
アポクリン腺が発汗するのは、体温調節ではなく、精神的な緊張などによるものです。
そのため、生活の乱れや疲労の蓄積で、アポクリン腺から多くの汗をかき、ワキガを発症してしまうケースがあります。
生活が乱れていると、疲れやストレスは無自覚のうちに溜まっていたりします。
規則正しい生活を送ることで、疲れやストレスを溜め込まないようにしましょう。
3-2.肉や油っこい食事は避ける
前述しましたが、アポクリン腺からはたんぱく質や脂質を含んだ汗が分泌されます。
本来、摂取された栄養素は、必要な分は吸収され、不要な分は尿などによって排泄されます。
しかし、臓器の処理能力を超えている場合、汗などにもそういった成分が含まれてしまいます。
にんにくやマヨネーズ、スナック菓子などは脂質や油分を多く含み、アポクリン腺を刺激したり、体臭がきつくなりやすい食べ物なので、特に注意が必要です。
ワキガの対策として良いのは和食です。
魚や野菜を中心とした食事はアポクリン腺を刺激するものは少ないため、ワキガの発症を抑えたい場合は、和食を中心とし、バランスの良い食事を心がけると良いでしょう。
3-3.定期的に運動をする
運動をすると汗腺が刺激されて逆効果に思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
むしろ汗をかかない生活こそ、汗の質を悪くし、ワキガの原因となりかねません。
普段から汗をかかない生活をしていると、体の代謝も悪くなり、老廃物が溜まりやすくなります。
汗には体内の老廃物が染み込みます。
老廃物を含んだ汗は不純物を多く含むため、臭いが強くなりがちです。
長年にわたって蓄積された老廃物は、それを出すためにも相応の期間を必要とします。
そのため、運動不足な期間が長いと、ワキガを発症してしまう可能性が高くなります。
ジョギングや水泳、お風呂やサウナに入るような、いわゆる有酸素運動が効果的です。
普段から定期的に汗をかくことで体内の不純物を出し、汗の質を良くすると良いでしょう。
ストレスの発散にもなるので、そういった意味においても定期的な運動は必要です。
4.ワキガ臭の対処法
上記ではワキガにならないための対策をお伝えいたしました。
では、実際にワキガになってしまった場合、どのような対処法があるのでしょうか。
ワキガは治療することもできますし、症状が軽い場合は自力で対応することも可能でしょう。
ここではワキガ臭に対しての対処法をお伝えいたします。
4-1.体を清潔に保つ
ワキガは、アポクリン腺から出る汗を表皮菌が分解することで、独特な臭いを発生していることを指します。
そのため、表皮菌についてアプローチするだけでも、軽度の場合は臭いを軽減できるかもしれません。
垢や皮脂が溜まっていると、表皮菌は繁殖しやすくなります。
表皮菌が多ければ、その分多くの汗を分解できてしまうため、臭いが強くなってしまうかもしれません。
それを防ぐためにも、脇を清潔に保つことが必要になります。
表皮菌が少なければ、汗をかいていても分解が進まず、臭いの元は作られずに済みます。
そのため、臭いがそこまで強くない人は、脇を清潔に保ち、小まめに除菌するだけでも、臭いを防ぐことができるでしょう。
4-2.制汗剤を使う
ワキガの原因である汗を軽減する方法です。
脇の汗が少なくなれば、臭いが軽減されるのは当然です。
スプレーやシートでは制汗効果が短いので、ロールオンタイプがおすすめです。
制汗成分を直接塗るものなので、長時間にわたって汗を止めてくれます。
激しい運動などでは成分が流れてしまうこともありますが、日常生活を送る場合は、一日汗を気にせずに過ごせることも多いでしょう。
注意点としては、香りのついている商品を避けることです。
ワキガ独特の臭いと香りが混ざることで、余計に臭いが強くなってしまう場合があります。
脇の清潔感だけでは不安な場合は、制汗剤を使用してみるのも良いでしょう。
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4-3.臭いを落とすための洗濯を行う
脇を清潔にし、制汗剤も使っているのに臭いが取れた気がしない、という場合は衣服の洗濯が効果的なことがあります。
何度も着ている衣服には、ワキガの臭いが染みついている場合があります。
ワキガの臭いは簡単な洗濯では取れないことがほとんどです。
衣服についたワキガ臭には、「酵素系漂白剤」というものが効果的です。
この酵素系漂白剤には除菌や消臭、漂白の効果があります。
これを溶かした水に衣服を漬け置きし、消臭します。
30~50℃の温水で利用すると、より効果的にワキガ臭を取り除くことができます。
衣服の繊維にしっかり働きかけるためには、10リットルの水に対して、大さじ1杯の漂白剤を使うと良いでしょう。
漬け置きは30分~1時間を目安に行ってください。
その後、漬け置きしていた衣服を通常の洗濯にかけます。
これをすると、衣服についたワキガ臭をかなり軽減することができます。
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洗濯以外にも台所用品の除菌・漂白にも使用できます。溶けやすいので手間もかかりません。
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4-4.手術を受ける
どうしてもワキガを解消したい場合は手術をするしかありません。
手術を受けることでアポクリン腺をなくし、ワキガを治療します。
ただし、治療を受ける場合は年齢に気を付けてください。
成長期の早い段階で手術を受けても、その後の成長でアポクリン腺が増える可能性が大いにあります。
そのため、治療を受ける場合は16歳以降を目安としてください。
ワキガを治療する方法は2つあります。
剪除法とミラドライです。
ここではこの2つの治療についてご紹介いたします。
剪除法
脇の皮膚を切開し、皮膚の裏から目視でアポクリン腺を削ぐ方法です。
保険適用なクリニックも多く、両ワキの施術を5万円ほどで受けられることが多いようです。
保険が適用されるため、他の方法と比較して安価に施術を受けることができます。
しかし、脇のシワに合わせて切開するものの、傷跡は残ってしまうことがほとんどです。
また、術後の経過観察や、腕を高くに上げてはいけないなど、体への負担は少し重いものです。
アポクリン腺は一度取り除いてしまえば、再生することは無いので非常に効果的です。
ミラドライ
水分に反応する電子パルスを照射することで、アポクリン腺を焼き、機能を止める方法です。
切開などをする必要がなく、1度行ってしまえば、その後クリニックに通う必要はありません。
しかし、比較的新しい方法であるため、まだ保険が適用されません。
そのため、両ワキで20万~50万円ほどかかるようです。
費用はかかるとはいえ、体に傷も残らず、その後も抜糸などの手間はかかりません。
もちろん1度の施術でアポクリン腺のほとんどを焼くことができるため、ワキガも解消されます。
目視で行う剪除法とは違い、電子パルスが自動で照射するので、術者によるムラもありません。
切開するのが嫌だったり、効果に不安がある場合はミラドライを受けるのが良いでしょう。
5.まとめ
ワキガは確かに遺伝するものです。
優性遺伝であるため、親から子に引き継がれやすい要素となっています。
ワキガかどうかを判断するには、3つのことを確認しましょう。
・第二次性徴期以降の臭いがくさい
・耳垢が湿っている
・服の脇が黄ばみ
ワキガ体質が遺伝されていたからといって、必ずワキガを発症するわけではありません。
アポクリン腺の動きや汗の質などによっては、ワキガにならずに済むかもしれません。
ワキガを発症させないために、多少でも効果がありそうな対策は以下です。
・規則正しい生活をする
・肉や油っこい食事は避ける
・定期的に運動をする
これらによって、アポクリン腺の動き鈍化させ、汗の質を良くできることが期待できます。
では、ワキガになってしまった場合はどのような対処が可能なのでしょうか。
ワキガと言っても症状は様々です。
自分で行える対処方で充分な場合もあれば、クリニックで治療を受ける必要がある場合もあるでしょう。
それら対処方は次です。
・体を清潔に保つ
・制汗剤を使う
・臭いを落とすための洗濯を行う
・手術を受ける
ワキガは確かに遺伝するものですが、いくらでも対策・対処は可能なものです。
体臭の問題は確かにデリケートですが、あまり深刻に考えすぎずに、自分にできる対応を行ってください。
【参考文献】
https://mycode.jp/fumfum/axillary-osmidrosis#thesis
http://tanaka-growth-clinic.com/shishunki/shishunki.html
http://www.lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/YNJ/YNJ3-1/image/YNJ3-1-003to008.pdf
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https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2018/017364.html
https://www.shiseidogroup.jp/rd/doctor/informationletter/backnumber/pdf/2000_002_01.pdf